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【導入】クサビ足場の「部材」が分かれば、現場のモヤモヤが一気に消える
「支柱のピッチ、450と475どっちだったっけ?」「この踏板、法令的にもうアウト?」——現場でこんなモヤモヤを感じたことはありませんか。
私は仮設設計を30年以上やってきましたが、クサビ足場のトラブルの半分は「部材の理解不足」から始まると痛感しています。寸法・規格・互換性・法令をきちんと押さえておくだけで、是正も事故もぐっと減ります。
この記事では、
クサビ足場の部材名称・寸法と役割
最新の安衛則(作業床幅40cm以上など)の押さえどころ 労働安全衛生規則の一部を改正する省令の概要
メーカー規格と互換性の注意点
購入・レンタル時に見るべきチェックリスト
を、現場写真(想定)と私の実案件での失敗談も交えながら整理します。
なお、この記事は厚労省の労働安全衛生規則および最新の解説資料、仮設工業会・主要メーカー資料をベースにしていますが、最終判断は必ず施工計画書と元請・メーカーとの協議で行ってください。YMYL領域ですので、その点だけは最初に強くお伝えしておきます。

クサビ足場とは?この記事で扱う範囲と前提
ここでは「クサビ足場」の定義と、この記事で扱う部材の範囲、そして関係する資格・法令の前提を整理します。誰が、どこまで責任を持って判断すべきかを最初に揃えておくと、後の議論がぶれません。
私は実務で、「クサビ足場」という言葉が現場ごとに違う意味で使われているのを何度も見てきました。まずは用語合わせからです。
クサビ足場とは
正式名称:クサビ緊結式足場
概要:支柱に設けたロゼットやコマに、水平材・斜材をクサビで打ち込んで緊結する足場
主な用途:低層〜中層の建築・改修工事、一戸建〜中層マンション、設備工事の仮設など
この記事で扱う範囲
対象:本足場として使用するクサビ緊結式足場(単管ブラケット足場などは除外)
高さの目安:おおむね地上〜31m程度までの外部足場(それ以上は構造計算・設計が必須)
対象読者:
35歳前後の現場監督・所長クラス
足場図面と現場管理の経験あり
クサビ足場の部材を体系的に整理し直したい方
関連する資格・法令(抜粋)
足場の組立て等作業主任者(高所の組立・解体・変更作業の指揮)
足場の特別教育(高さ2m以上の構造の足場に関する作業)
参照資料 労働安全衛生規則の一部を改正する省令の概要労働安全衛生規則
第563条:足場の作業床の幅40cm以上、床材の隙間3cm以下、建地との隙間12cm未満 等
参照資料 労働安全衛生規則(足場等関係)が改正されました
重要
この記事はあくまで部材理解の整理が目的です。具体の施工計画・強度チェック・仮設計画書・構造計算は有資格者・設計者の責任で行ってください。
クサビ足場の基本構成と荷重・法令の押さえどころ
クサビ足場は「支柱・踏板・手すり・筋交い・ジャッキベース・ブラケット・先行手すり」などの組み合わせで成立します。ここでは、部材を並べる前に「どんな荷重条件と法令に縛られているのか」をざっくり押さえます。
クサビ足場の基本構成
現場写真をイメージしながら、クサビ足場をざっくり分解すると次の通りです。
縦方向:支柱(建地)
横方向:水平材・踏板(作業床)
斜め方向:筋交い(ブレース)
下端:ジャッキベース・敷板
外側/内側:ブラケット・階段・張出し部材
墜落防止:手すり・中さん・先行手すり・メッシュシート等
私の感覚では、「どの部材が欠けるとどんな事故につながるか」をイメージできるかどうかが、現場監督と図面屋の分かれ目だと思っています。
荷重と作業床幅の基本
労働安全衛生規則では、足場の作業床について次のような要件が定められています。
参照資料 労働安全衛生規則(足場等関係)が改正されました
作業床の幅:40cm以上
床材間の隙間:3cm以下
床材と建地との隙間:12cm未満
手すり:高さ85cm以上+中さん(35〜50cm程度)の設置(足場・架設通路共通)
以前は30cm幅の踏板も多く流通していましたが、現在は40cm未満の作業床は原則NGです。古い部材を流用していると、検査で一発で指摘されます。

先行手すりの位置づけ
「先行手すり」は、足場の組立・解体時の墜落防止措置として、厚労省や国交省のガイドラインで強く推奨されています。
参照資料 「手すり先行工法等に関するガイドライン」について
ガイドライン等で手すり先行工法の積極的採用が求められている
多くの元請・自治体が**「事実上の必須」として入札要件に盛り込んでいる**
現場を回っていても、先行手すりがない足場は「その時点で選定ミス」と見なされやすい印象です。
主要部材一覧|名称・標準寸法・使い方
この章では、代表的なクサビ足場の部材を表形式で整理します。名称・標準寸法レンジ・主な用途・法令上のポイントをまとめておくと、発注や現場確認がぐっと楽になります。
私自身、かつて部材名称がごちゃごちゃになっていて、見積書と図面・現場の呼び方が全部違うという地獄を経験しました。表で一度頭を整理しておくと、あのモヤモヤがかなり減ります。
部材一覧表(標準的な例)

※寸法レンジは代表的な例です。実際の寸法・許容荷重は必ずメーカーのカタログ・技術資料で確認してください。
| 部材名 | 代表的寸法レンジ | 主な用途 | 法令・ポイント |
|---|---|---|---|
| 支柱(建地) | 0.9 / 1.2 / 1.8 / 2.4m 他 | 垂直支持、階高調整 | コマピッチ450mm or 475mm。規格混在NG |
| 踏板(鋼製作業床) | 幅400mm × 長さ600〜1800mm | 作業床 | 幅40cm以上が必須。古い30cm幅は原則不可 |
| 手すり(親綱) | 0.6 / 0.9 / 1.2 / 1.5 / 1.8m | 転落防止 | 高さ85〜95cm目安。上下2段+中さんが基本 |
| 筋交い(ブレース) | 高さ〜1.8mスパン対応 等 | 横揺れ防止 | 支柱間2.0m以内ごとに設置が原則 |
| ジャッキベース | ベース300×300mm、高さ調整〜500mm | 地盤レベル調整 | 枠組用とクサビ用で規格が異なる。過大伸長NG |
| ブラケット | 張出し400〜600mm | 内側作業スペース拡張 | 張出側の荷重と踏板幅に注意 |
| 先行手すり | 各種スパン対応 | 組立・解体時の墜落防止 | 元請や自治体仕様書で事実上必須が増加中 |
| 階段ユニット | 高さに応じたセット | 昇降設備 | はしごより階段型が望ましいとされる |
| メッシュシート・防炎シート | 高さ・スパン各種 | 飛来落下・墜落防止 | 風荷重と固定方法に注意 |
【図解イメージ】主要部材の配置
「外部足場の標準1スパン」を想定した図で、支柱・踏板・手すり・筋交い・ジャッキベースを示す
先行手すりは組立段階の状態を別図で示すと理解しやすい
階段ユニットを一スパン分だけ色分けし、「ここが動線」と明示
実際の記事には、ここに現場写真または簡易CAD図を入れて、「どのパーツがどの名称か」が一目で分かるようにしておくと、離脱率はかなり下がります。

施工時の組み合わせとNGパターン|安全と是正のコツ
どんなに立派な部材を揃えても、組み合わせ方を間違えると一気に危険な足場になります。ここでは、私が実際に見てきたNGパターンと、その是正ポイントを整理します。
よくあるNGパターン
支柱ピッチ450と475の混在
見た目では分かりにくく、組み上がってから「踏板が入らない」「手すりが入らない」というトラブルに。
是正で丸一日ロス、という現場を私は何度も見ました。
30cm幅踏板の残置使用
古いストックを「もったいないから」で残し続けるパターン。
安衛則の40cm以上という要件を満たさず、是正指導+入替コストで結局高くつきます。
ブラケット上での過積載
ブラケット上に材料を積みすぎる。
設計荷重を超え、たわみや変形の原因に。
筋交いの抜け・間引き
作業性を優先して外してしまい、そのまま「付け忘れ」。
強風時に大きく揺れ、メッシュシートの風荷重も重なって危険。
是正のコツ(現場監督目線)
朝礼前の一周点検
「筋交い・手すり・先行手すり・踏板幅」の4点だけは、毎朝自分の目で見てしまう。
支柱と踏板をメーカー別に色分け・区画保管
倉庫・ヤードの段階で混在を防ぐのが一番早いです。
是正記録は写真+部材単位で残す
後日の元請説明や、次現場への教育資料としても使えます。
点検・記録・教育|「部材」を軸にしたチェック体制
点検や教育も、「部材単位で見る」クセをつけると漏れが減ります。ここでは、日常点検・定期点検・引渡前点検のそれぞれで、どんなチェックリストを持つと安心かを整理します。
日常点検(当日作業開始前)
手すり等の取り外し・脱落の有無
踏板の浮き・破損・泥付着
筋交い・接続部の緩み
ジャッキベースの沈下・敷板のズレ
悪天候・地震後点検
作業再開前に写真付きで必ず記録
メッシュシート・養生の破損やバタつき
筋交い・手すり・先行手すりの変形
支柱周りの地盤状況(ぬかるみ、洗掘)
引渡前点検(元請立会い)
私は、引渡前点検のときに**「部材チェックシート」を使うようにしています**。
部材名称ごとにチェック欄:
支柱寸法・ピッチ
踏板幅・長さ
手すり高さ・中さん位置
先行手すりの有無
階段・昇降設備の状態
適合証明・カタログの写しの添付欄
本記事の最後で、「クサビ足場 部材チェックシート(PDF・Excel)」のダウンロード案内をしています。現場のKY・TBMの資料にもそのまま使える形式にしています。

メーカー規格・互換・仕様|混用NGと適合証明
クサビ足場の怖いところは、「一見似ている部材でも規格が微妙に違う」ところです。ここでは、代表的な規格差と互換性の考え方を押さえておきます。
支柱ピッチと水平ピッチの違い
代表的な例を簡単な表にすると、次のようなイメージです(実際の数値は各メーカー資料で確認してください)。
| メーカー例 | 支柱ピッチ | 水平スパン | 備考 |
|---|---|---|---|
| A社(450系) | 450mm | 約900〜914mm | いわゆる「Aタイプ」系 |
| B社(475系) | 475mm | 約900mm | 「ビケタイプ」系 |
| C社(450系) | 450mm | 約900mm | セブン系 等 |
支柱ピッチ450mmと475mmは基本的に互換性なし
水平スパンもインチ(914mm)系とメートル(900mm)系で違いがある
私は一度、450系の支柱に475系の踏板を無理に合わせようとして、現場で大きなロスを出したことがあります。以降、「支柱ピッチと踏板の組み合わせ」を最優先で確認するようになりました。
混用NGの原則
仮設工業会の認定基準やメーカー仕様書では、他社製品との混用を原則認めていないケースがほとんどです。
外観が似ていても、
材質
板厚
溶接仕様
許容荷重
が異なることが多く、強度計算の前提が崩れます。
ポイント
「混用OK」をうたう製品があっても、必ずメーカーの適合証明・技術資料で確認し、元請と協議した上で使ってください。

ケーススタディ:規格混在で是正指導を受けた現場
ここでは、私が実際に関わった「規格混在で是正を受けた現場」をケーススタディとして紹介します。失敗例を共有することで、同じ落とし穴にはまらないようにしていただきたいからです。
事例:450系と475系が1スパン内で混在
現場:2階建て木造住宅の改修工事
状況:既存の足場に増設をかける際、別業者のストック部材を一部流用
問題点:
支柱の刻印を確認せずに組み立て
1スパン内で450系と475系が混在
手すり・踏板が斜めに入り、たわみ・ガタつきが発生
元請と労基署の立入で是正指導となり、足場一面をほぼ組み直しになりました。
是正までの流れ
メーカー刻印の確認と図面への反映
使用部材を一旦解体し、ヤードでメーカー別に仕分け
部材チェックシートを作成し、次現場以降は混在防止ルールを徹底
この経験から私は、**「図面にメーカーと支柱ピッチを明記する」**ことを標準ルールにしました。図面に書いておくだけで、現場の迷いとトラブルがかなり減ります。
ダウンロード資料|クサビ足場の部材チェック&管理シート
この記事で整理した内容を、そのまま現場で使える形に落とし込んだ 「部材チェックシート(PDF)」と「プロ向け部材管理シート(Excel)」を用意しました。
現場ごとに一から表を作り直すより、ひな形を共通化しておくのが一番のコスパだと私は感じています。
クサビ式足場 部材チェックシート(A4・PDF版)
- 日常点検・悪天候後点検・引渡前点検の3区分構成
- 部材ごとに「OK/要是正/交換要」のチェック欄つき
- 備考欄には写真番号が書けるので、是正指示と連動しやすい設計
- A4印刷して朝礼・KY・元請立会いにそのまま使用可能
安衛則563条・564条で求められる足場点検の考え方をベースに、
私が普段使っているチェック項目を現場用に整理したシートです。
プロ向け:クサビ足場 部材管理シート(Excel版)
- シート1:01_入力シート … 区分・部材名・寸法・メーカー・支柱ピッチ・許容荷重・点検結果・写真番号を入力
- シート2:02_完成版 … 点検結果を整理し、元請・社内提出用の印刷フォーマットとして使用
- シート3:03_マニュアル … 日常/悪天候後/引渡前点検の違い、部材別チェックポイント、判定基準などを詳しく解説
- 色分けとレイアウトは、ISHIDA DESIGN OFFICEのブログに合わせた落ち着いた薄紺ベース
「しょぼい無料シート」ではなく、私が業務でも使えるレベルまで作り込んだテンプレです。
現場ごとにExcelをコピーしておけば、足場の履歴と是正記録を一元管理できます。
今後、このテンプレを使った積算シートや先行手すりチェック専用版も順次追加していく予定です。
メールアドレスをご登録いただいた方には、新しいテンプレを優先的にご案内します。
よくある質問(FAQ)
A. 労働安全衛生規則第563条に基づき、足場の作業床幅は40cm以上が求められています(つり足場等を除く)。旧来の30cm幅踏板は原則使用できません。
労働安全衛生規則の一部を改正する省令の概要
A. 基本的に混用不可と考えてください。仮設工業会の認定基準やメーカー仕様では他社混用を前提としておらず、強度計算の前提も崩れるため、同一メーカー・同一シリーズで統一するのが原則です。
A. 現行の安衛則では「手すり先行工法を明示的に義務化」している条文はありませんが、厚労省通達やガイドラインで先行手すり工法の積極的採用が求められており、国交省資料でも本足場使用と併せて強く推奨されています。多くの元請・自治体仕様書では事実上の必須条件になっています。
「手すり先行工法等に関するガイドライン」について
A. 「互換性あり」の表示があっても、適合証明書・技術資料で具体の組み合わせ条件を確認し、元請と協議した上で使用してください。刻印・形状の違いなどで誤使用が生じやすいため、ヤードでの管理ルールと併せて運用するのが安全です。
厚生労働省|労働安全衛生規則(安衛則)
A. まず現行法令(作業床幅40cm以上、手すり高さ85cm以上+中さん)への適合を確認してください。寸法が合っていても、腐食・変形・溶接部の損傷があれば交換が必要です。検査時には、古い仕様のまま使用していると是正指導の対象になりやすいです。
足場等に係る安全対策について
まとめ|部材理解が現場の安全とコストを守る
クサビ足場の部材を正しく理解し、規格を揃えて運用することは、単なる「足場屋のこだわり」ではなく、現場の安全とコスト、そして信頼を守るための最低条件です。最後に、この記事の要点を5つに整理し、次の一歩をご提案します。
まとめの5点
部材名称・寸法・役割を整理しておくと、図面・見積・現場の会話が一気にスムーズになる。
作業床幅40cm以上・手すり高さ85cm以上+中さんなど、現行安衛則の寸法要件を満たさない古い部材は「卒業」させる。
支柱ピッチ450mm/475mmや水平スパンの規格統一は、混在トラブルを防ぐ最重要ポイント。
先行手すりや階段型昇降設備など、「働きやすい足場」は安全だけでなく工程・コストの安定にも直結する。
部材チェックシートとExcel台帳で、点検・記録・教育を「見える化」すると、是正と再発防止がぐっと楽になる。
あなたへのメッセージ(まとめのコメント)
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
足場の部材って、一つひとつはただの鉄の塊に見えるかもしれません。でも、その一本一本が、職人さんの命と家族の安心、そして現場の信用を支える大事なパーツだと私は思っています。
私自身、若い頃は「まあこれくらい大丈夫だろう」と流してしまって、後から是正で何日も現場が止まり、胸がぎゅっと痛くなったことが何度もありました。だからこそ、この記事を通して、あなたの現場の安全が少しでも高まり、ムダな是正コストや工程ロスが減ってくれたら、これ以上うれしいことはありません。
もしこの記事が、
「よし、うちの足場ももう一段レベルを上げてみよう」
「若い子たちにちゃんと教えていこう」
そう思うきっかけになれたなら、私はあなたのチームの一員になれたような気がします。
これからも、現場で本当に役立つ足場情報やチェックシート、Excelツールをコツコツ出していきますので、「またI.D.O(ISHIDA DESIGN OFFICE)の記事を読んでみようかな」と思っていただけたら、とても心強いです。
どうか今日も、安全第一で。
そして、あなたの現場が安全で、無理のないコストで、気持ちよく仕事ができる場所になることを、心から願っています。
参考・出典リスト(省庁・規格・など)
厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の概要(足場からの墜落防止対策)」等 労働安全衛生規則の一部を改正する省令の概要
国土交通省・地方整備局資料「本足場の定義について」「手すり先行工法の足場を使用しましょう」等 足場等に係る安全対策について
各都道府県労働局「手すり先行工法等に関するガイドライン」に関する通達 「手すり先行工法等に関するガイドライン」について
安全衛生教育テキスト「国の定める足場等に関する安全対策」(安衛則第563条・564条解説) 安衛則第564条
※最終更新日:2025年11月13日
👤この記事の執筆者/監修
ISHIDA DESIGN OFFICE
代表 I.D.O(仮設設計技術者/足場組立作業主任者)
建設業歴30年以上、仮設設計・点検・講義実績多数・仮設設計技術者
厚労省・仮設工業会の最新基準に基づき執筆


