本文
導入

「このスパン、どこまで載せていいんだろう?」
くさび足場を見ていて、そんなモヤモヤを感じたことはないでしょうか。
結論から言うと、くさび足場の最大積載荷重は、仮設工業会の技術基準で「1層1スパンあたり 250kg/400kg」「床付き布わくの許容積載荷重 120〜250kg(幅による)」と、かなりはっきり決まっています。
ただ、現場では…
床材の許容荷重=足場全体の許容、と勘違い
「職人2人くらいなら大丈夫でしょ」と感覚で判断
資材置き場にして長時間載せっぱなし
――こうした運用が重なると、支柱や床材が設計値を超えて、ある日一気に破断……という最悪のパターンにつながります。
この記事では、私(ISHIDA DESIGN OFFICE)が実務で使っている資料と仮設工業会の技術基準をもとに、
2.250kg/400kgが出てくる理由
3.床付き布わくの幅別・許容積載荷重
4.現場での表示方法とチェックのコツ
5.積載オーバーで実際にヒヤッとしたケース
を、現場目線でわかりやすく整理します。
途中で、PDFダウンロードやチェックリストにもつなげられる構成にしてあります。
「もう積載荷重で怒られたくない」「安全を守りながらコストも抑えたい」という方は、保存版として最後まで読んでください。
前提と用語整理:くさび足場と積載荷重
ここでやること:
くさび緊結式足場は、仮設工業会の認定部材を用いて組み立てるビル工事用・住宅工事用足場の総称です。
技術基準では、31m以下のビル工事用足場と軒高10m未満の住宅工事用足場で条件が整理されています。
このうち本記事でメインに扱うのは、**くさび緊結式ビル工事用足場(高さ31m以下)**の積載荷重です。
用語の整理だけ先にしておきます。
積載荷重
→ 実際に作業床に載る「人+資材+機材」の合計荷重最大積載荷重(足場の最大積載荷重)
→ 「1層1スパンあたり、ここまでは載せてOK」と技術基準で定められた上限値床付き布わくの許容積載荷重
→ 幅240〜500mmごとに決められた「床材そのもの」の限界値
現場では、この3つがごちゃ混ぜになりがちです。
**正しい順番は「床材の許容」<「足場全体の最大積載」<「実際の積載計画」**というイメージを持ってください。
また、積載計画を立てたり是正判断をするのは、足場組立等作業主任者や仮設設計担当者の監督下で行う必要があります(YMYL対策としても明記しておきます)。
クサビ足場の積載荷重の基本式と考え方
ここでやること:
「1層1スパンあたり」の考え方をざっくり理解する
連続スパンと非連続スパンで数値が変わる理由をイメージする
仮設工業会の「くさび緊結式足場の設計」では、足場の最大積載荷重を次のように定めています。
1層1スパンあたり
・同一層連続スパン載荷:250kg
・同一層連続スパン以外の載荷:400kg
これを現場語にすると、
連続スパンにずらっと荷重を載せる場合 → 1スパン250kgまで
ところどころ間を空けて載せる場合 → そのスパンは400kgまで
下の画像のイメージになります。
クサビ足場は、荷重の載せ方によって許容値が変わります。連続スパンは250kg、間引き載荷の場合は400kgが基準です。
さらに注意すべき点として、
この表値にかかわらず、床付き布わくの許容積載荷重を超えて載荷しないこと。
とあります。
つまり「支柱・構造としては400kgまでいけても、床材が250kgまでなら250kgが上限」ということです。
私が設計チェックをする時は、必ず
- 床付き布わくの幅と許容積載荷重
- 荷重を載せるパターン(連続か、間引きか)
- 作業内容(塗装・躯体工事・大きめの機械等)
この3点をメモしてから、計算を始めます。
最初にここを押さえておくと、後から「この数値どこから出てきた?」と聞かれたときも説明しやすくなります。
【最新版】最大積載荷重の基準表(250kg/400kg/床付き布わく)
ここでやること:
「結局いくつまで載せていいの?」を表で一発で分かるようにする
床付き布わくの幅ごとの許容値を、ざっくり頭に入れる
設計資料・技術基準に基づくビル工事用くさび足場(梁間1219mm想定)の代表的な値を、現場で使いやすいように整理し直します。
3-1. 足場の最大積載荷重(1層1スパンあたり)
| 載荷条件 | 最大積載荷重(1層1スパン) |
|---|---|
| 同一層連続スパンに載荷 | 250kg |
| 同一層連続スパン以外の載荷 | 400kg |
連続スパン載荷:1層のほぼ全部にまんべんなく荷重が載るイメージ
連続以外の載荷:一部のスパンだけを材料置場にするようなイメージ
3-2. 床付き布わくの許容積載荷重(幅別)
| 幅 [mm] | 許容積載荷重 [kg] |
|---|---|
| 240 | 120 |
| 250 | 125 |
| 300 | 150 |
| 400 | 200 |
| 500 | 250 |
※この「1枚あたりの許容積載荷重」が、足場の最大積載荷重をさらに縛る条件になります。
3-3. よく使う組み合わせの目安
幅500mmの床付き布わくを2枚敷く → 許容積載荷重は 250kg × 2 = 500kg
ただし1層1スパンあたりの最大積載は、
連続スパン載荷:250kgまで
連続以外の載荷:400kgまで
つまり、床材としては500kgまで耐えられる設計でも、足場全体のルールとしては250kg/400kgの方が優先されます。
計算でイメージする:1スパンにどこまで載せていい?
ここでやること:
現場で「250kg・400kg・500kg」の関係をイメージで掴む
現場での「これくらいなら行けるか?」を数字に落とすクセをつける
設計資料にも掲載されている例題をベースに、ざっくりイメージを共有します。

条件:
梁間方向支柱間隔:1219mm
床付き布わく:幅500mmを2枚敷く
この場合、
床付き布わくの許容積載荷重
→ 250kg × 2 = 500kg(床材としての上限)
そこに、載荷パターンの違いが絡みます。
同一層連続スパン載荷
→ 1層1スパンあたり 250kgまで同一層連続スパン以外の載荷
→ 1層1スパンあたり 400kgまで
よくある勘違いは、
「床付き布わく2枚=500kgいけるんだから、そのスパンに500kg載せていいよね?」というパターンです。
正しくは:
床材の限界:500kg
足場の最大積載:250kg/400kg
→ 「小さい方」を採用、です。
私が現場に呼ばれて是正したケースだと、
メーカーのカタログに「床付き布わく250kg」の表示がある
それを見て「じゃあ2枚で500kgまでOK!」と理解
連続スパン載荷でも500kg近く載せていた
という事例がありました。
ヒヤリ・ハットで終わりましたが、写真付きで是正指導書を作り、積載管理のExcel+PDFチェック表を共有したところ、それ以降は現場がかなり落ち着きました。
法令・技術基準と31m・10mの境目
ここでやること:
「どの現場で、どの技術基準を見ればいいか」を整理する
法令・通達との関係をざっくり押さえる
くさび足場の積載荷重は、労働安全衛生法・関係法令+仮設工業会の技術基準・設計資料をセットで考える必要があります。
高さ31m以下のビル工事用足場
→ 「仮設工業会 Q&A」軒高10m未満の木造住宅等
→ 「足場に関する労働安全衛生法上の規定について」
さらに、ビル工事用足場の使用基準の中で最大積載荷重や表示義務が定められています(1スパン当たりの積載上限/表示義務など)。
ここで大切なのは、
技術基準を守っていても、元請・ゼネコン側でさらに厳しい社内基準を設けている場合がある
特に長期荷重・偏荷重に関しては、「積載禁止」や「一時置きのみ可」といった運用ルールが上乗せされることがある
という点です。
私は打ち合わせのとき、必ず
「技術基準上は○kgですが、御社の安全基準ではどうされていますか?」
と一言確認するようにしています。
ここを聞いておくと、後から「うちは積載禁止って言ったよね」と言われずに済みます。

よくある誤解とリスク:ここが地獄ポイント
ここでやること:
現場でよく見る誤解・ヒヤリを、短くまとめます。
❌ 床材カタログの許容荷重=足場全体の許容だと思っている
❌ 「人2人くらいだから大丈夫」と体重ベースでしか見ていない
❌ 作業床を常設の資材置き場にしている
❌ 連続スパンなのに、400kg側の数字を採用している
❌ 住宅用の基準(200kg/400kg)とビル用の基準を混同している
こうした誤解が重なると、
支柱の許容支持力を超える
筋かい・壁つなぎの計画から外れた荷重が入る
梁枠上や開口部まわりに想定外の荷重がかかる
結果として、局部的な沈下・撓み→転落事故・資材落下事故につながる可能性があります。
積載荷重は「数字が小さいから余裕を見ておこう」くらいでちょうどいい世界です。
逆に「ギリギリまで載せよう」とすると、そこが地獄の入口になると感じています。
積載荷重の表示義務と現場での運用ルール
ここでやること:
「どこに」「何を書くか」をハッキリさせる
証拠として残る形にする
技術基準では、足場には最大積載荷重を表示することが求められています。
具体的な看板はこんな感じです!
7-1. 表示位置の実務例
昇降口横のA3ラミネート掲示
主要な作業床ごとに、「最大積載荷重 ○kg/スパン」ラベル
資材置き場として運用するスパンには、専用の案内プレート
7-2. 表示例(足場作図にも必要)
最大積載荷重:
連続スパン載荷:250kg/1層1スパン
連続以外の載荷:400kg/1層1スパン
※床付き布わくの許容積載荷重を超えないこと
私は現場で、写真と図面、チェックリストを1セットにしてPDF化し、Google DriveやOneDriveにまとめています。
監査や是正指導のとき、
「この時点で、ここまで積載OKと決めていました」
と証拠を出せるだけで、話の進み方が全く変わります。
点検・記録・教育:積載管理を「証拠」に残す
ここでやること:
日常点検・週次点検で見るポイントを整理
若手への教育ネタにできる形で残す
積載荷重まわりの点検では、次の3つを意識すると現場がかなり安定します。
日常点検
明らかに過積載になっているスパンがないか
資材置きが「一時置き」から「常設」に変わっていないか
週次点検
表示ラベルの内容と、実際の運用がズレていないか
工種切り替えで積載パターンが変わっていないか
引渡し前
監査用に、表示・写真・点検記録を1つのPDFにまとめておく
記事内で配布するPDFチェックリストやExcelテンプレには、
スパンごとの最大積載荷重
実際の運用(人・資材・期間)
担当者・点検者の署名欄
をセットにしておくと、教育資料(KY・TBM)にも流用できます。
ケーススタディ:積載オーバー寸前からの是正例
ここでやること:
ありがちな失敗→是正→再発防止までを短くストーリー化
読んだ人が「自分の現場に置き換える」きっかけをつくる
ケース:外壁改修現場での「なんとなく資材置き」

くさび足場の外周に、塗装・シーリング・タイルの3業者が同時に乗り入れ
各社が「とりあえずここに置かせて」と、同じスパン付近に材料を集め始める
気づくと、連続スパン全体が半常設の資材置き場状態に
私が呼ばれて現場確認をしたとき、
「正直、このままでは250kg/スパンを超えている可能性が高い」と感じました。
そこで、
使っている床付き布わくの幅・枚数を確認
設計資料に基づき、連続スパン載荷時の最大積載荷重250kg/スパンを再説明
スパンごとに「資材置きOK/NG」を区分し、OKスパンには**400kgまで可(非連続)**の条件を明示
その内容をA3の運用ルール図+PDFにして、全職長に共有
結果として、
過積載ぎみだったスパンは、翌日にはかなり軽くなり
職長会議でも「やっぱり数字で決めてもらえると助かる」と言われました
このとき痛感したのは、
「なんとなく置いている」状態を数字と言葉で定義し直すだけで、現場のストレスがかなり減るということです。
内部リンク
ダウンロード資料|くさび足場の積載荷重チェック&管理ツール
この記事で解説した内容を、そのまま現場で使える形に落とし込んだ
「最大積載荷重早見表(PDF)」「スパン別・積載管理テンプレ(Excel)」「点検チェックシート(PDF)」を用意しました。
毎回ゼロから表を作るより、統一のひな形を使い回す方が圧倒的に早くて正確――私自身も現場でそう実感しています。
くさび足場 最大積載荷重 早見表(A4・PDF版)
250kg/400kg の違いを一目で把握できる
床付き布わくの 幅別・許容積載重量(120〜250kg) を一覧化
A4印刷して掲示・朝礼資料・元請説明に使える
「現場で迷わない」ためのミニ図解つき
仮設工業会の技術基準(設計・使用基準)をもとに、
私が実務向けに再構成した早見表 です。
スパン別 積載管理テンプレート(Excel版・無料版)
スパンごとに“許容積載”と“想定積載”を比較し、OK/NGを自動判定する専用ツール。
シート1:入力シート
→ スパンID、床幅×枚数、連続/非連続、荷重条件を入力シート2:完成版
→ 床わく許容 × スパン最大積載の 小さい方を自動採用。余裕kgと判定を色分け表示シート3:マニュアル
→ 積載荷重の考え方、床付き布わく幅ごとの許容値、現場での運用ポイントを整理
色味とレイアウトは、ISHIDA DESIGN OFFICEブログと統一したブルー基調。
「無料テンプレ」の域を超え、業務レベルで使える精度 を意識して作り込んでいます。
積載荷重チェックシート(PDF版・点検用)
日常点検・悪天候後点検・引渡前点検 に対応
スパンID/床幅×枚数/想定積載/許容積載/判定を一括記録
写真番号と是正内容をそのまま紐付けできる
A4印刷して 元請指摘・是正記録のエビデンス として使える
安衛則563条・564条で求められる「足場の点検」を、
私が現場で使っているフォーマットに合わせて再構成したシート です。
今後の追加テンプレートについて
このテンプレート群をベースに、
先行手すりチェック専用版
足場の適合証明チェックリスト
強風・降雨後専用点検シート
などを順次追加していく予定です。
メールアドレスをご登録いただいた方には、新しいツールを優先的にご案内します。お問い合わせからお知らせください。
お問い合わせ
FAQ:くさび足場の積載荷重まわりのよくある質問
A. ビル工事用足場の場合、仮設工業会の設計資料では**1層1スパンあたり「連続スパン載荷で250kg」「連続以外の載荷で400kg」**とされています。ただし、床付き布わくの幅ごとの許容積載荷重(最大250kg/枚)を超えないことが条件です。
A. いいえ。床付き布わく2枚で500kgの許容があっても、足場全体の最大積載荷重(250kg/400kg)が優先されます。小さい方を上限と考えてください。
A. 技術基準では「足場には最大積載荷重を表示すること」とされています。法令・通達・元請の安全基準も踏まえ、昇降口や主要な作業床に分かりやすく表示しておくことが重要です。
A. 長時間荷重や偏荷重は、設計時に想定している条件と大きくズレる場合があります。原則として「一時的な置き場」とし、常設置き場にする場合は別途計算・協議が必要です。
A. 住宅工事用足場には、**別の使用基準(1スパン200kgなど)**が定められています。ビル工事用の数字と混同しないよう、計画段階で必ず確認してください。
まとめ:安全とコストを両立するための5つのポイント
最後に、この記事の要点を5つに絞ります。
- くさび足場の最大積載荷重は、連続スパン250kg/非連続スパン400kg(1層1スパン)
- 床付き布わくの許容積載荷重(幅240〜500mmで120〜250kg/枚)を超えてはいけない
- 床材の数字と足場全体の数字が食い違うときは、小さい方を採用する
- 最大積載荷重は、技術基準に基づいて現場で分かりやすく表示し、写真と記録で残す
- 積載計画・点検・是正は、必ず有資格者の監督下で行い、元請・社内基準も含めて協議する
記事のエンディングコメント(読者を励ます一言)
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
積載荷重の話は、どうしても「数字ばかり」で頭が痛くなりがちです。
でも、その数字の1kg、1枚の床付き布わくの違いが、現場で働く仲間の命と生活を守ることにつながります。
私自身、これまで多くの足場計画・是正・講習に関わるなかで、
「もう少し早く積載のことを整理しておけば、あのヒヤリは防げたかもしれない……」
と感じた場面が何度もありました。
この記事が、佐藤さんの現場で
事故ゼロの足場づくり
ムダのない資材配置とコスト削減
新人にも説明しやすい教育資料づくり
の少しでも助けになれば、これ以上うれしいことはありません。
もし「この考え方、うちの現場にも合いそうだな」と感じていただけたら、
ぜひ他の記事や、PDF・Excelテンプレもチェックしてみてください。
「ISHIDA DESIGN OFFICE の書く足場記事は、現場でそのまま使えるな」
そう思ってもらえるように、これからもコツコツ改善しながら発信していきます。
また次の記事でも、一緒に安全で気持ちのいい足場を考えていきましょう。
参考・出典リスト(原典のみ)
※最終更新日:2025年11月15日
👤この記事の執筆者/監修
ISHIDA DESIGN OFFICE
代表 I.D.O(仮設設計技術者/足場組立作業主任者)
建設業歴30年以上、仮設設計・点検・講義実績多数・仮設設計技術者
厚労省・仮設工業会の最新基準に基づき執筆
仮設設計・CAD作図・構造チェックのご依頼はこちら:
ISHIDA DESIGN OFFICE 公式サイト


