はじめに
足場の現場では、工具や資材がうっかり落ちてしまうことで、大きな事故につながることがあります。
万が一、作業員や通行人に当たれば、大けがにつながる危険もあるため、落下物の対策はとても重要です。
このような事故を防ぐには、足場の設計段階から、実際の施工・管理に至るまで、しっかりとした落下防止の対策を行うことが欠かせません。
この記事では、労働安全衛生規則第563条や最新の業界資料をもとに、図面を描く方、現場を管理する監督さん、実際に足場を組む鳶職の方など、**足場に関わるすべての人に役立つ「落下物防止のポイント」**をわかりやすくまとめています。

落下物防止対策の3つの柱
幅木(つまづき止め)の設置
幅木の目的
足場の端に設置することで、資材や工具の転落を防ぎます。労働安全衛生規則では10cm以上の高さが義務付けられていますが、実際には15cm以上の設置が推奨されています。
認定基準と性能
- 水平方向60kg、鉛直方向85kgの荷重に耐えること。
- 作業床との隙間は1cm以下。
- L字型の幅木を使用すれば、支柱との隙間を埋めやすく安全性が向上します。
取り付けの注意点
- 認定基準に準拠した製品を使用する。
- 「根がらみ」などと干渉しない位置にしっかり固定すること。
参考資料
Microsoft PowerPoint – 足場パンフレット 厚生労働省資料より
内部リンク: 巾木(幅木)とは?設置基準・種類・注意点を完全解説【法律と仮設工業会基準まとめ】」

メッシュシートの使用
メッシュシートの目的
足場の外周に設置されるメッシュシートは、資材や工具、粉じんの飛散・落下を防止するための安全対策です。
特に都市部や通行人の多い現場では、労働者や通行人の保護において重要な役割を果たします。
メッシュシートには以下の基準があります
作業のため物体が落下することにより、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、 高さ10cm以上の幅木、メッシュシート若しくは防網又はこれらと同等以上の機能を有する設備を設けること。
これは、落下物防止措置としてメッシュシートが「幅木等」として認められていることを意味し、一定条件下での設置が推奨されています。
工事現場の周辺に危害を及ぼすおそれがある場合、国土交通大臣の定める基準に従って、 鉄網または帆布などで現場を覆う措置を講じなければならない。
つまり、工事現場の近隣環境や建物高さに応じて、落下物防止措置としてのメッシュシート設置が義務付けられる場合もあるということです。
使用するメッシュシートの規格と認定
JIS規格と仮設工業会の認定基準
- 使用するのはJIS A 8952(建築工事用シート)1類以上の認定合格品であること。
- 一般社団法人仮設工業会による構造・素材・耐久性などの厳しい認定制度をクリアした製品が推奨されています。
素材と構造の基準
- 合成繊維(ナイロンなど)製で、防炎性能を備えたもの
- はと目の間隔は35cm以下、内径は10mm以上
- はと目は腐食しにくく、経年劣化しないことが求められます
正しい取付方法と注意点
取付けにおける基本ルール
- すべてのはと目を足場支柱などに確実に固定する
- 一部のみの取り付けでは、風や荷重によるシートのバタつきや外れの原因になります
風荷重対策
メッシュシートは風を受けやすく、風圧による構造への影響を計算に入れて補強が必要です。
特に足場図面を書く時に、メッシュシートの足場に対する安全を担保する計算を必ず行われなければなりません!

防護棚(朝顔)の設置

防護棚(朝顔、アサガオ)とは?
作業中の落下物をキャッチし、下部の通行人や車両への被害を防ぐ構造物です。主に建物外周の低層部に設置されます。
設置基準
- 国土交通省の「建設工事公衆災害防止対策要綱」を遵守すること。
- 棚板の傾斜は20度以上。
- 取付部は緊結部付き支柱と腕木の交点付近。
- 全スパンに壁つなぎを設置。
使用部材
- 棚板
- 腕木材
- 吊材または支持材
- 斜材(補強用)
- 壁つなぎ
参考資料:労働安全衛生規則改正リーフレット
図面作成者への注意:ビル用くさび式足場では接合部の剛性が低いため、全スパンに壁つなぎを描き込むことが重要です。

その他の落下防止装置
以下の設備も「幅木等」とみなされ、法的に認められています。
- 防音パネル:遮音と同時に落下物を防止
- ネットフレーム:形状保持に優れ、補強しやすい
- 金網:視認性と通気性を両立し、飛来物をキャッチ
参考サイト:墜落防止.com|落下防止措置の最新動向

実際の現場で注意すべきポイント
図面作成者向け:
- 各所に必要な幅木、防護棚、メッシュシートの位置を明記する。
- 風荷重に対応した補強計画を事前に盛り込む。
現場監督向け:
- 使用するシートや棚が認定製品であるか確認する。
- 作業中や強風時に設備がずれていないか巡回確認を行う。
鳶職人・足場施工者向け:
- 支柱と幅木・メッシュシートの固定を確実に行う。
- 支持材や壁つなぎを所定の位置・角度で取り付ける。

よくあるトラブルと対策
以下のトラブルは特に多いトラブルです!
設置の際には十分注意が必要です!
トラブル事例 | 原因 | 対策 |
幅木がズレた | 固定不足 | L字型幅木と堅固な金具使用 |
メッシュシートがバタつく | 固定箇所の不足 | すべてのはと目を支柱に固定 |
朝顔の落下 | 取付位置ミス or 補強不足 | 指定の交点に取り付け、斜材で補強 |

まとめ|足場落下防止は全員の責任

落下物防護は単なる「ルール」ではなく、現場全体の安全を守る生命線です。設計者・監督者・職人、それぞれが役割を理解し、正確な知識と意識を持つことが、事故ゼロの現場につながります。
本記事で紹介した対策を取り入れ、現場の安全性を一段と高めましょう。
より安全な現場のために
- 足場 工事 保険の導入も万が一の備えとして有効です。 (専門機関や保険代理店でのご相談をおすすめします)
- 保険と併用することで、施主・元請け・職人すべてのリスクを軽減できます。
【関連記事】足場工事に必要な保険とは?完全ガイド
安全第一。それは設計から始まり、現場で守られる。
注意事項!!
「これらは法的助言ではなく一般的な解説です」

この記事を書いた人:
本記事は仮設設計士として20年以上の実績を持つISHIDA DESIGN OFFICEが執筆しています。
参考資料に日付
出典:厚生労働省「足場からの墜落防止措置」(2015年6月)
最終更新日:2025年5月20日