なぜ“法律じゃない”のに守らないといけないのか?
「仮設工業会の技術指針って法律じゃないのに、なぜ現場では従う必要があるのか?」
現場監督、図面作成者のあなたも、そんな疑問を持ったことはありませんか?
実際、ある建設現場で設計図通りに足場を組んだにもかかわらず、事故が発生。
裁判で問われたのは「技術指針を守っていたかどうか」でした。
つまり、技術指針は法律ではないが“実質的なルール”として機能しているのです。

目次
仮設工業会 技術指針とは?|法律との違いと拘束力
技術指針は、一般社団法人 仮設工業会が策定した足場や仮設機材に関する「安全基準」です。
- 法律ではない(労働安全衛生法などとは異なる)
- しかし労災調査や裁判では「業界標準」として用いられる
- 遵守していなかった場合 “注意義務違反” と見なされることも
参考資料はこちら
くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(改訂版) 仮設工業会
経年仮設機材の管理について 厚生労働省
現場と設計がズレる理由|よくあるトラブルと対処法
仮設工業会の指針を忠実に設計しても、現場で“使えない”ことは多々あります。
典型的なズレ事例:
設計では900mmのブラケット → 現場の障害物で取付不可
図面には中さんなし → 現場判断で追加し、設計と矛盾
このような**「設計と現場のギャップ」**を解消するには、現場監督が最低限の指針を把握しておくことが必須です。
対策 PDFチェックリスト・図解資料の社内共有で現場連携がスムーズに。

事故時に訴訟責任を問われるのは誰か?
技術指針を守らなかった場合、次のような責任が問われます:
- 元請企業:安全配慮義務違反(賠償請求)
- 現場監督:管理責任不履行(行政指導、信用低下)
- 設計担当:設計ミス(訴訟リスク)
記録すべき内容:
- 注釈付き設計図
- 足場の設置写真(手すり・壁つなぎなど)
- 技術指針との整合性を示す根拠資料
対策 Googleドライブなどで安全記録の一元管理を。
これだけは押さえたい!技術指針の数値まとめ
項目 | 指針推奨値 |
作業床の幅 | 40cm以上(推奨45cm〜) |
手すりの高さ | 上段:85〜120cm/中段:35〜50cm |
ブラケット出幅 | 450〜600mm |
壁つなぎピッチ | 垂直3.6m・水平3.6m以内 |
対策 PDF早見表などを作成し現場職長にも共有できます。
設計者・職長とのスムーズな連携方法
成功事例:
- PDF注釈で現場状況を共有(例:「既存配管あり」)
- 現場確認シートの週次共有ルール化
- LINE WORKSで三者(設計・現場・職長)情報共有
対策 テンプレート配布(Excel/PDF)でCV・滞在時間を向上
事故を防ぐ!古い仮設材のリスクと訴訟回避策
古くなった仮設機材は、以下のような基準で使用可否を判断します:
- 使用年数8年以上:安全点検が必須
- C級(損傷あり)→廃棄
- A・B級 → 整備後「再使用可」ラベル
対策 整備・検査フローを図解で解説したチェックシート配布推奨

まとめ “読む”ではなく“使う”指針へ
- 技術指針は業界の暗黙ルール
- 「なぜ必要か」を理解し、「現場でどう活かすか」に焦点を
- 三者連携・記録・資料共有で、事故も訴訟も防げる
こちらの記事もおすすめ 内部リンク
- 【2025年改正対応】足場の労働安全衛生法571条の完全解説|現場監督・足場業者必見
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- 【2025年版】足場点検の完全ガイド|現場監督・職長のための実務&法的チェックリスト

この記事を書いた人
ISHIDA DESIGN OFFICE
代表 I.D.O(仮設設計技術者/足場組立作業主任者)
- 建設業歴30年以上、仮設設計・点検・講義実績多数
- 厚労省・仮設工業会の最新基準に基づき執筆
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