2025年の法改正を受けて、クサビ緊結式足場(通称:クサビ足場)の規格サイズや使用基準に変更点が生じました。本記事では、最新の法律と仮設工業会の技術指針をもとに、実務者が押さえるべきポイントをわかりやすくまとめました。現場監督や足場業者の方はもちろん、施工管理の新人にも役立つ内容です。
1. クサビ足場とは?概要と特長
クサビ足場は、支柱や手すり、布板などをクサビ(くさび)で緊結する構造の足場で、組立・解体が迅速に行えるのが特徴です。住宅や低中層建築物の外装工事などで多用され、近年は戸建てやリフォーム現場を中心に普及しています。
メリット:
- 工期短縮(組立が早い)
- 部材の省スペース化
- 運搬・保管コストの削減
- 作業効率向上
一方、規格サイズや使用基準に関する知識が不十分だと、施工ミスや法令違反によるリスクが発生します。

2. クサビ足場の主要部材と規格サイズ一覧
以下は一般的に使用されるクサビ足場の部材とその規格サイズです。現場によって使用部材が異なるため、仕様書と照らし合わせながら確認することが重要です。
部材名 | 主なサイズ(長さ) | 備考 |
---|---|---|
支柱(建地) | 1800mm / 1200mm | 高さに応じて選択 |
手すり | 1800mm / 1200mm | 作業床の外側に必須 |
布板(踏板) | 400mm × 1800mm | 積載荷重に注意 |
筋交い | 1200〜1800mm | 横揺れ・風圧対策 |
ジャッキベース | 450mm程度 | 敷板との併用が必須(2025年法改正) |
3. クサビ足場の規格にはセンチとインチの2種類がある
足場の寸法には、センチメートル(メーター)規格とインチ規格の2種類が存在します。両者は見た目にはよく似ていますが、わずかな寸法の違いがあるため、現場で混在させると重大な事故につながるおそれがあります。
インチ規格の特徴
- アメリカで開発された枠組足場などに多く使われる
- 長さ例:1829mm(6フィート)、1219mm(4フィート)、610mm(2フィート)など
- 日本国内でも輸入製品や一部の枠組足場に使用
メーター(センチ)規格の特徴
- 日本の現場に合わせて設計された規格
- 1800mm、1500mm、1200mm、900mm、600mmなど、300mm間隔で統一
- わずかにインチより短く、軽量で運送コストが抑えられる
見分け方と注意点
- 見た目では判別困難なため、巻尺で実測するのが確実
- 混在使用は危険。寸法差により緊結不良や脱落の恐れあり
- 計画段階でどちらの規格を使うかを事前に明確にしておくことが重要
クサビ足場の規格サイズにはインチサイズとセンチサイズがある
4. クサビ足場の適用基準と使用制限
現場での安全性確保のために、以下のような基準が定められています。
- 最大支柱間隔: 1800mm以下(2025年より厳格化)
仮設工業会 「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(認定編)」 - 最大足場高さ: 原則31m以下(枠組足場と異なる)
厚生労働省 足場からの墜落防止のための措置を強化します - 作業床の幅: 400mm以上が推奨
厚生労働省 墜落防止のための安全設備設置の作業標準マニュアル - 作業床の高さ: 2m以上では手すり・中さん・幅木の設置が必要
労働安全衛生法令における墜落防止措置と安全帯の使用に係る主な規定 - 積載荷重: 1.5kN/m²(約150kg/m²)以下が一般的
一般社団法人仮設工業会 仮設構造物等の安全性に関する承認制度
適用基準を超える使用をする場合は、構造計算または特別な安全対策が必要です。
参考になる過去の記事を紹介します
足場支柱と布材 足場の建地間隔 布材の高さについて
足場の外手摺、中桟手摺、幅木の高さは何cm?労働安全衛生規則の基準と注意点を解説
作業床と手すり高さの安全基準|労働安全衛生規則 第564条・第565条の完全解説(Q&A形式)
仮設工業会の技術指針 “法律ではない”けど守らないと訴訟リスク?現場監督、図面作成者も必読!
5. 2025年の法改正と技術指針の主な変更点
2025年4月に施行された最新の仮設工業会技術指針と厚生労働省通知により、以下のポイントが改正されました:
- 支柱間隔の厳格化: 最大1800mm以内に統一
- 風速制限の明確化: 風速34m/s以上が予想される場合は作業中止義務
- ジャッキベース下の敷板設置義務: 地盤沈下・傾斜防止のため
- 落下防止措置の義務強化: 作業床の高さ2m以上で手すり・中さん・幅木を全て設置
これらの改正は、近年増加する強風・地震・転落事故への対応策として導入されました。

6. 現場監督・業者が注意すべきポイント
① 組立図との照合
必ず仮設設計図や施工マニュアルに基づいて部材を配置してください。特に支柱の間隔や踏板の配置は安全性に直結します。
② 毎日の点検と記録
ジャッキの沈下、手すりのガタつき、布板のズレは日々点検することが求められます。記録も残しておくことでトラブル防止に役立ちます。
③ 高所作業時の安全帯
高さ2m以上の作業ではフルハーネス型墜落制止用器具の使用が義務づけられています(労働安全衛生規則 第540条の2)。
④ 雨・風など悪天候時の作業判断
足場が滑りやすくなったり、風圧で構造に負荷がかかるため、作業中止の判断基準を明確にしておきましょう。

7. よくある質問(FAQ)
Q1:支柱の間隔はどれくらいまでOKですか?
→原則1800mm以内です(2025年の指針で明記)。超える場合は構造計算が必要です。
Q2:布板1枚での作業は可能?
→落下リスクが高まるため、原則として2枚以上の布板設置を推奨します。
Q3:台風時の対応は?
→風速34m/s以上が予想される場合、原則作業中止。前日に足場の点検・補強が必要です。
Q4:インチ規格とセンチ規格を混ぜて使ってもいい?
→NGです。混在は緊結不良を招き、重大事故の原因になります。必ず統一してください。
8. まとめ|安全性・効率性を両立させるには
2025年の最新法令と仮設工業会指針をふまえ、クサビ足場の適切な設計・施工・点検がますます重要になっています。センチ規格とインチ規格の違いを理解し、現場での計画・運用に正確に反映させましょう。
現場での安全管理と効率性向上の両立のためにも、最新の情報を常にアップデートし、実務に反映させましょう。
👤この記事を書いた人
ISHIDA DESIGN OFFICE 代表 I.D.O 足場組立等作業主任者/仮設設計技術者
仮設計算歴30年以上。建設現場での足場設計・点検・安全管理業務に従事。
現在は仮設設計と安全な工事にアドバイスをしている