はじめに

くさび式足場は「速い・軽い・狭小対応」に強い反面、法令・指針に沿った手順と点検の徹底が事故ゼロの分かれ目になります。私は見積段階で「先行手すりの仕様」と「壁つなぎ間隔」を必ず確認し、手戻りと労災リスクを潰していくことにしています。
この記事では、最新の法令・技術指針に基づいたクサビ足場の組み立て方と安全に関する重要なポイントを、わかりやすく解説します。
本記事の結論(要点)について
- 組立順序は「地盤→ベース→支柱→水平材/手すり→作業床→筋かい→上層展開→点検」が基本線。
- 墜落防止(安衛則563条)と点検・記録(同条)を最優先。先行手すり高さ85cm以上+中さんが原則。
(厚労省改正資料) - 壁つなぎは安衛則570条の適用範囲を理解し、仮設工業会 技術基準で「くさび=単管同等」とする設定が実務の標準。(仮設工業会資料)
- 先行手すりは認定基準(仮設工業会)に適合品を使用し、混用NG。
- チェック表・教育資料を毎朝運用→記録保存で安全と監査対応を両立。(労働安全衛生規則)
まず知っておきたいクサビ式足場の基礎知識
クサビ式足場を正しく安全に組み立てるために、作業の対象範囲や資格の要件、部材の名称などの基本を整理しておきましょう。
※以下の内容は、**仮設工業会「足場計画指針」および労働安全衛生法(安衛法・安衛則)**に基づいています。
🔹 適用範囲
この記事で扱うのは「くさび緊結式足場(クサビ式足場)」です。
これは、支柱や布材を金属製のくさびで固定して組み立てるタイプの足場を指します。
住宅や低層建築、改修工事など、狭い現場でもスピーディーに組める足場として広く使われています。
🔹 資格・教育のルール
足場の組立て・解体を行う作業は、**「足場の組立て等作業主任者」が指導・監督する必要があります。
また、補助作業員には特別教育(安衛法第59条・安衛則第36条)**が義務づけられています。
つまり、資格者の監督下で作業を行うことが法令上の前提です。
🔹 よく使う用語の整理
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 先行手すり | 上層を組む前に先に取り付ける安全手すり。X種・Y種があり、墜落防止の基本。 |
| 中さん(中間手すり) | 作業床から約45cmの位置に設置する補助手すり。落下防止を強化。 |
| 巾木(はばぎ) | 作業床の端に取り付ける10cm以上の板。工具や資材の落下を防止。 |
| 壁つなぎ | 足場と建物を固定して転倒を防ぐ金具。設置間隔は9m(縦)×6m(横)以内が目安。 |
| 控え・根がらみ | 足場の下部を補強して安定させる部材。水平保持や転倒防止に重要。 |
メーカー混用は禁止
異なるメーカーのクサビ式足場部材を混ぜて使用するのは原則禁止です。
各メーカーは独自の認定試験と適合証明(システム承認)に基づいて安全性を保証しており、
混用すると強度・寸法・接合部の精度が合わず事故の原因になります。
地域・現場条件による違い
地域や現場の条件によって、壁つなぎの間隔や補強方法は変わります。
特に風の強い地域や、仮囲い・養生シートを設置する現場では、
風荷重の影響を考慮して設計・補強を行うことが必須です。
最終的な判断は、施工計画書と元請け会社との協議によって決定します。

積算の基本と歩掛(見積のズレを防ぐコツ)
クサビ式足場の見積で誤差が出る一番の原因は、
「歩掛(人件費)」を低く見積もることと、「回送・付帯費」を入れ忘れることです。
私が普段行っている方法は、
「材工共の内訳」と「現場条件の補正」を分けて計算し、
Excelで計算履歴(検収痕跡)を残すやり方です。
こうすることで、後から根拠を説明しやすくなります。
見積の基本式(概念)
見積金額 =〔材工共(人件費+機材償却+搬入・回送+管理・安全経費)〕 ± 現場条件(狭小・夜間・養生など)
つまり、足場の総額は「人件費」と「機材費」を中心に、
搬入・回送・安全対策・現場特有の条件で調整して決まります。
歩掛(作業効率)の目安
| 作業区分 | 歩掛(人時/㎡) | 備考 |
|---|---|---|
| 組立 | 0.35〜0.55 人時/㎡ | 二側・外部標準。現場条件により変動。 |
| 解体 | 組立の 0.7〜0.9倍 | 天候・階数・運搬距離で補正。 |
※上記は仮設工業会の技術指針および実務平均値(2025年時点)をもとにした参考値です。
※社内実績・現場特性での補正を必須としてください。
コストを構成する4つの要素
| 項目 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 人件費 | 作業にかかる人の時間と単価 | 職長1名+作業員2名で1日あたり○㎡施工 |
| 機材費 | 枠材・ブラケットなどの減価償却・保守 | リース料/保管費/メンテナンス費 |
| 回送費 | 現場への運搬と積み替えの費用 | 距離×回送便数で計算(10km超は補正) |
| 安全・管理費 | 教育・KY活動・仮囲い・トイレなど | 現場ごとの安全指導や付帯設備費を含む |
Excelでの管理方法(実務向け)
見積書を手計算で作るより、Excelで歩掛と回送を分けて管理する方が確実です。
テンプレートでは「歩掛シート」と「回送シート」を分けておくと、
現場ごと・工期ごとの差を見える化できます。
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見積り単価と原価の考え方(実務でズレを防ぐポイント)
クサビ式足場の単価は「数量」だけでなく、現場条件によって大きく変わります。
たとえリース相場を基準にしても、**「壁つなぎの密度」「養生の有無」「搬入条件」**など、
目に見えにくい費用を考慮しないと、最終的に赤字になることもあります。
つまり、単価はリース料だけで決めてはいけません。
現場の条件を一つずつ数値化して補正するのが、見積精度を上げるコツです。
リース単価の相場(参考目安)
| 区分 | 単価目安 | 補足 |
|---|---|---|
| クサビ式足場リース単価 | 150〜250円/㎡ | 地域・工期・仕様・リース会社によって変動。 |
| 組立・解体費用 | 1,500〜2,800円/㎡(材工共) | 高所・狭小・夜間などは割増設定。 |
| リースのみ案件 | 150〜180円/㎡程度が多い | 短期・小規模ほど単価上昇傾向。 |
「参考値」「社内実績ベース」「地域・仕様・期間により変動」
現場条件で変動する主な要素
| 分類 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 付帯費 | 現場特有の条件にかかる追加費用 | 狭小地搬入、夜間作業、発生材養生、仮設電気・水道、近隣対策など |
| 安全費 | 労働安全衛生法に基づく安全装備・教育費 | 先行手すりレンタル、フルハーネス、安全帯、巾木、階段ユニット、落下防止ネットなど |
| 管理費 | 現場運営や労務・調整にかかる費用 | 現場監督指導、KY活動、日報管理、交通費、事務管理など |
| 運搬費(回送) | 搬入距離・便数によって変動 | 10km以内×往復2便を基準に、距離ごとに補正計算 |
原価の見える化で利益を守る
見積りを作る際は、「何にどれだけかかったか」が後から追えるように
Excelで“ロット別・項目別”に入力・管理しておくと便利です。
| 費用区分 | 入力項目 | Excelでの管理例 |
|---|---|---|
| 人件費 | 職長・作業員・人工数 | 「歩掛」シートに入力 |
| 機材費 | リース・償却・保管 | 「資材原価」シートに入力 |
| 回送費 | 距離×便数×単価 | 「回送」シートで自動計算 |
| 安全・管理費 | 教育・KY・養生・仮囲い | 「付帯費」シートに記録 |
Excelで「IN(支出)」と「OUT(請求)」を分けて管理すると、
現場ごとの原価率・利益率が一目で見える化できます。
ただし、単価の最終決定は必ず元請け協議で確定させましょう。
クサビ式足場の安全な施工手順(How To)
クサビ式足場の施工で最も重要なのは、
**「転落・落下」と「倒壊」**という2つの大きなリスクを防ぐことです。
そのためには、**「先行手すり」と「壁つなぎ」**を
できるだけ早い段階で設置する計画を立てることが欠かせません。
また、実際の施工に入る前に、
施工計画書の確認・合図方法の統一・作業範囲の明確化を行い、
チーム全体で手順を共有しておくことが安全への第一歩です。
ステップ1:ベースの設置

- 地盤・動線:整地→敷板→ジャッキベース据付。
- 水平になるよう調整
ステップ2:支柱の設置

- 支柱をベースに差し込み、垂直を確認
- クサビ金具で固定
- 支柱建て:垂直・通りを確認、根がらみ確保。
ステップ3:手すり・筋交いの取り付け

- 支柱間に水平手すりを設置
- 水平を確認しながら、上下2段設置する
- 筋交いを対角に取り付け、構造を補強
- 水平材・先行手すり:中さん・巾木計画を同時に。
ステップ4:踏板(布板)の設置

- 手すりと支柱の上に踏板を乗せる
- 落下防止のロックを確実にかける
- 作業床敷設:ロック確実、床材の隙間・支持数を点検(安衛則563条)。
- 上層展開:同手順の反復+適時壁つなぎを入れる。
ステップ5:上層への展開

- 同様の手順を繰り返して上層に展開
- 作業床は2層以上にわたって設置しない(原則)
- 系統昇降:梯子 or 階段ユニットを設置、開口養生。
- 点検記録:当日開始前/悪天候後の点検と記録保存(厚労省改正資料)。
足場の組み立て安全のポイント
以下の流れは、**仮設工業会の技術指針 くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準**に基づく
クサビ緊結式足場の標準的な施工手順です。
| ステップ | 内容 | 安全のポイント |
|---|---|---|
| ① ジャッキベースの設置 | 地盤を確認し、敷板を敷いてジャッキベースを水平に設置します。 | 地盤の沈み込み防止。水平器で確認。 |
| ② 支柱の建込み | 支柱を差し込み、鉛直を確認してクサビで固定します。 | 倒れ防止のため、仮筋交いで初期固定。 |
| ③ 水平材・筋交いの取付け | 支柱間に水平材を取り付け、構造を補強します。 | 直角・対角を測定し、ねじれを防止。 |
| ④ 手すり(先行手すり)の設置 | 作業床を組む前に、先行手すりを取り付けます。 | 墜落防止の最重要工程(高さ75cm以上)。 |
| ⑤ 作業床(布板)の設置 | 布板をかけて作業床を作ります。 | ロックピンを確実に固定。落下防止を徹底。 |
| ⑥ 上層の展開 | 下層の安定を確認してから上層を組み上げます。 | 同時作業を避け、1層ずつ確実に進める。 |
| ⑦ 壁つなぎの設置 | 2層目を超えたら、壁つなぎを所定間隔で設置。 | 風荷重・倒壊防止の要。9m×6m以内が目安。 |
| ⑧ 巾木・養生ネットの取付け | 作業床端部に巾木を、外周に養生ネットを設置。 | 工具・資材の落下を防止。 |
| ⑨ 最終点検・立入確認 | 水平・鉛直・緊結部の確認、立入検査を実施。 |
組立作業中の安全対策(現場で守るべき基本ルール)
特に「墜落・熱中症・転倒」は毎年多くの災害報告があり、
厚生労働省や仮設工業会の安全指針でも最も重点が置かれています。
現場では、次の4つの基本対策を徹底することが求められます。
1. 常時フルハーネス型安全帯を使用する
作業中は必ずフルハーネス型安全帯を装着し、
親綱またはライフラインに常時フックをかけることが原則です。
※ 胸ベルト式・胴ベルト式のみの使用は2022年以降、労働安全衛生規則で原則禁止。
(安衛則 第518条・墜落制止用器具の規格第2条に準拠)
特に組立・解体中は、手すりや床板が未設置の状態が多く、
ハーネスの使用が「命綱」になります。
2. 垂直移動は梯子または階段付き部材を使用
上層・下層の移動では、支柱や筋交いをよじ登る行為は絶対に禁止です。
必ず以下の安全な方法を採用します。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 足場用梯子(固定タイプ) | 支柱にしっかり固定できる専用部材。最も一般的。 |
| 階段付き部材(ステップユニット) | 昇降が安定し、資材の上げ下ろしも安全。高所作業向き。 |
仮設材の上に立つ・手すりを足場代わりにする行為は、重大災害の原因になります。
3. 定期的な休憩と水分補給を行う
30分〜1時間ごとに短時間の休憩と水分補給を行いましょう。
夏季は特に、熱中症防止が安全管理の一部とされています。
直射日光下では帽子・空調服・冷却タオルを活用
水分はスポーツドリンクや経口補水液でナトリウムを補給
作業員間で声かけ・体調確認を徹底する
体調異常(めまい・吐き気・倦怠感)が見られた場合は、
直ちに作業を中断し、涼しい場所で休息を取ること。
4. 気温35℃以上では作業制限・中止を検討
気温が35℃を超える環境では、
体温上昇・集中力低下による事故リスクが大幅に上がります。
35℃以上 → 軽作業のみ実施、または作業時間を短縮
37℃以上 → 原則として作業中止 (参考資料 労働安全衛生規則 第611条(坑内の気温))
※ 元請・安全衛生責任者と協議のうえ、作業計画を見直すことが望まれます。

禁止事項と是正の流れ(現場での対応フロー)
クサビ式足場の組立・解体作業では、
「たった一つのミス」が転落・倒壊などの重大事故につながります。
そのため、法令(労働安全衛生規則)に基づき、
以下の行為は厳しく禁止されています。
禁止されている主な行為
| 危険行為 | 内容 | 想定されるリスク |
|---|---|---|
| ロック未掛け | 布板(作業床)のロックピンを掛け忘れる | 作業中の板のズレ・落下 |
| 手すり欠落 | 上段・中段の手すりが外れている/設置忘れ | 墜落・転落事故 |
| クサビ半掛かり | クサビが奥まで打ち込まれていない | 支柱・水平材の抜け落ち、構造不安定 |
| 未養生の開口部作業 | 開口部・外周部に養生(ネット・巾木)が未設置 | 工具や資材の落下、第三者災害 |
これらの行為は「即時作業中止の対象」となります。
安全管理者・職長・作業主任者は発見次第、是正指示を行う義務があります。
是正の流れ(Corrective Flow)
安全違反が見つかった場合は、
次の手順に従って**確実に是正(修正)**を行います。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 作業中止 | 発見時点でその区画の作業を一時停止。関係者以外立入禁止。 |
| ② 責任者点検 | 作業主任者または安全管理者が現場を点検し、原因を確認。 |
| ③ 是正対応 | ロック再掛け・手すり設置・養生補修など、正しい状態に修正。 |
| ④ 記録・報告 | 是正完了を記録(写真・日報・チェックリスト)に残す。 |
| ⑤ 再開許可 | 責任者が再点検し、安全確認後に作業を再開。 |
| ⑥ KY活動(水平展開) | 翌日のKYミーティングで全員に情報共有し、再発防止。 |
法的根拠と技術基準
労働安全衛生規則 第563条
→ 「作業床・手すり・開口部の点検と記録の義務」
→ 「墜落防止措置(手すり高さ85cm以上+中さん設置)」厚生労働省 改正資料(2023年)
→ 手すり高さ85cm以上+中さん必須/仮設工業会技術指針と整合。仮設工業会 技術指針(2025年版)
→ クサビ緊結部の完全固定・先行手すりの早期設置を明記。
これらの基準に従っていない状態で作業を続けると、
労働基準監督署による是正勧告・作業停止命令の対象となります。
点検・記録・教育(現場を守る3つの基本)
足場工事において、**点検は「保険」・記録は「盾」**です。
もし事故が起きても、「正しく点検し、記録を残していたか」で責任の所在が大きく変わります。
私は現場で、次の3つの段階に分けて点検・記録・教育を徹底しています。
① 日常点検(毎朝のルーチン)
毎日の作業前に、安全確認を5〜10分で行うことが基本です。
この「日常点検」を習慣化するだけで、事故の7割は防げると言われています。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 手すり・中さん | 脱落・緩み・欠落がないか確認 |
| 作業床(布板) | 支持点の数・ロックピンの掛け忘れがないか |
| クサビ部分 | 緩み・半掛かりがないか |
| 壁つなぎ | 所定間隔で設置されているか |
| 通路・梯子 | 妨げ・滑り・破損がないか |
写真+チェック表+責任者署名をセットで残すと、後日の証拠にもなります。
② 週次点検(構造・外装・風荷重の確認)
週1回は、構造全体と外装の安全性を重点的に確認します。
特に風荷重に関わる箇所は、仮囲いやメッシュシートが原因で倒壊する事例があるため要注意です。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| メッシュシート・仮囲い | 破れ・たるみ・強風時の外し忘れがないか |
| 筋交い・控え | 緩み・欠落・変形がないか |
| 支柱の沈下 | 雨天・地盤変化による沈み込みがないか |
| 接続部 | クサビ・ピン・ボルトの緩みがないか |
強風後や台風通過後は、必ず臨時点検を追加で実施します。
③ 引渡し前点検(監査対応にも備える)
工事完了後は、全体の安全状態を最終確認し、記録として残すことが重要です。
| 点検・提出項目 | 内容 |
|---|---|
| 全景写真 | 足場全体・四方・上部を撮影(施工状態が分かる角度) |
| 是正履歴 | 点検で発見した不具合とその修正記録 |
| 教育記録 | 「足場の組立て等作業主任者」「特別教育」「TBM(ツールボックスミーティング)」の実施記録 |
| 署名記録 | 点検実施者・責任者の署名を添付 |
| 保存 | 足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間、『点検結果』及び『点検者の氏名』を記録・保存することが必要 |
監査や労基署の調査でも「点検簿+写真+教育記録」があれば、適正施工の証拠になります。
④ 悪天候後の特別点検(必須対応)
強風・豪雨・地震などの異常気象後は、
通常点検とは別に特別点検を実施し、その内容を記録・保存する必要があります。
点検項目:支柱の沈下、布板の浮き、クサビ緩み、メッシュ破損
記録方法:日付・点検者・結果・写真添付
保存:厚生労働省の指針により、点検記録を一定期間保管することが推奨されています。

クサビ式足場の部材・互換性・仕様の基本ルール
クサビ式足場は、**「混用禁止」**が大原則です。
メーカーごとに設計基準・認定条件・部材寸法が異なるため、
異なるメーカーの部材を組み合わせると、強度不足や事故の原因になります。
そのため、**認定・適合証明によるトレーサビリティ(追跡性)**を確保し、
使用するすべての部材が同一メーカー・同一システムであることを確認する必要があります。
主な認定部材一覧(仮設工業会の認定対象)
| 部材名 | 役割 | 点検・確認のポイント |
|---|---|---|
| 支柱(緊結部付) | 足場全体を支える柱。 | 変形・亀裂・サビ・ピン穴摩耗を点検。 |
| 布材(水平材) | 作業床を支える横材。 | 曲がり・緩み・変形を確認。 |
| 床付布枠(踏板一体型) | 作業床兼用の布材。 | ロックピンの掛かりを確認。 |
| ブラケット | 壁際・張出し部の補助支え。 | 取付位置・角度・荷重制限を確認。 |
| 斜材(筋交い) | 水平方向の変形を防止。 | 緊結部の緩み・サビを確認。 |
| 先行手すり | 墜落防止。X種/Y種を用途で選定。 | 認定ラベル・性能表示の有無を確認。 |
| ジャッキベース | 支柱の高さ調整。 | ねじ部・ベース板の変形や汚れを点検。 |
出典:一般社団法人 仮設工業会 技術資料・認定対象一覧(2025年版)
先行手すりの選び方(X種/Y種の違い)
先行手すりは、墜落防止の最重要部材です。
認定基準に基づき、用途と構造に合わせて正しい種類を選ぶ必要があります。
| 種別 | 特徴 | 使用目的 |
|---|---|---|
| X種 | 斜材性能を持ち、構造補強としても機能する | 高層部や外部足場など、風荷重を受けやすい箇所 |
| Y種 | 斜材性能はないが、墜落防止用として十分な強度を持つ | 低層や内部足場など、作業補助主体の箇所 |
※ いずれも、「安全帯取付性能」「水平抵抗力試験」に適合した製品であることが必須です。
認定ラベルや製品カタログで性能区分を確認してください。
高さと設置の目安(仮設工業会技術基準)
クサビ緊結式足場の組立限度高さは45mが目安。
(※仮設工業会「認定編」基準より)ただし、風荷重や仮囲いの条件により、
必要に応じて壁つなぎ・控え材を増設すること。
高層現場では、必ず設計段階で構造計算または技術指針に基づく強度検討を行いましょう。
仮設の計算、これ一冊で安心!
『イラストによる 建築物の仮設計算(改訂4版)』は、足場や型枠支保工の計算が苦手な人でもスラスラ読めるやさしい解説書。
イラストと例題で、何をどう計算すればいいかがすぐにわかります。
CADで図面を描く人にもぴったり。
「計算書、ちゃんと合ってるかな…?」と不安な方に、自信をくれる一冊です!
🔹 混用禁止と承認システムの考え方
メーカーの異なる部材を混ぜて使うこと(混用)は禁止です。
各メーカーが発行する「システム承認」または「適合証明」がある場合は、
その承認内容を最優先とします(メーカー仕様が最上位)。「見た目が似ている」「サイズが合う」といった理由での混用は、
認定外施工となり、法的・保険的に無効になる可能性があります。
根拠:一般社団法人 仮設工業会『クサビ緊結式足場の安全施工指針(2025年版)』
ケーススタディ|「最上層の壁つなぎ不足」で発生したトラブル例
ある改修現場で、最上層の壁つなぎ不足と強風の影響により、
足場全体に**水平変位(横揺れ)**が発生し、
クサビが緩んで作業床に隙間が広がるという事例がありました。
幸い、事故には至りませんでしたが、
もし気づくのが遅れていたら倒壊・転落の重大災害につながる可能性があったケースです。
発生状況
工事内容:外壁改修工事(中層・クサビ式足場 約30m)
発生時期:強風注意報発令時(風速15m/s前後)
現象:上層部で壁つなぎ不足 → 横揺れ発生 → クサビ部の緩み → 布板の隙間拡大
主な原因(分析)
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 壁つなぎ不足 | 最上層で壁つなぎが片面しか設置されておらず、風圧に対抗できなかった。 |
| 風力係数の見落とし | 仮囲いの形状変更で風を受ける面積が増加していたが、再計算をしていなかった。 |
| 計画見直し未実施 | 元請け・下請け間で変更共有が遅れ、施工計画の更新がされていなかった。 |
参考:仮設工業会「足場の安全施工指針」では、仮囲い設置・撤去などにより
風荷重条件が変わった場合、再計算・再点検を行うことが明記されています。
是正対応(Corrective Action)
問題発生後、以下の対策を実施しました。
| 対応項目 | 内容 |
|---|---|
| 壁つなぎ増設 | ピッチ(間隔)を見直し、縦9m・横6m以内を厳守。端部にも追加設置。 |
| 筋かい増設 | 横方向の補強を追加して構造剛性を向上。 |
| 先行手すり更新 | 経年劣化していた先行手すりを新しい認定品(X種)に交換。 |
| ロック総点検 | 全てのクサビ・ピンの掛かりを再確認し、緩みを解消。 |
是正後は、現場監督・安全管理者の立会いで最終確認を行い、
その記録を写真+チェックリストで保存しました。
再発防止策(Preventive Action)
再発を防ぐため、次のルールを全現場で共有しました。
仮囲い・風荷重条件が変わったら「壁つなぎ再計算」を必ず実施。
朝礼(KY活動)で変更点を全員に読み上げて共有。
最上層・端部・吹きさらし箇所は壁つなぎを「増設基準」で計画」。
風速10m/s以上予報時は、布板・メッシュの点検を義務化。
「仮囲いの変更」は、必ず「構造再検討のトリガー」として扱う。
これをルール化することで、以降の現場では同様のトラブルは発生していません。
クサビ式足場 組立チェックリスト【無料ダウンロード】
現場で事故ゼロを目指すなら、**「点検と記録の習慣化」**が何より大切です。
私自身、図面を描く立場として数多くの現場を見てきましたが、
ヒヤリ・ハットの多くは「確認を忘れた」「記録を残していなかった」という小さな油断から起こります。
そこで、仮設工業会の技術指針(2025年改訂)と労働安全衛生規則(第563条・第570条)に基づき、
**現場でそのまま使える「クサビ式足場 組立チェックリスト(2025年度版)」**を作りました。
この1枚があれば、
作業前の点検項目を現場全員で共有
不具合発見 → 是正 → 再開許可までの流れを明確化
写真+署名記録で監査対応にもそのまま使用可能
現場監督・職長・足場組立業者の方にとって、
「自社の安全文化を見える化するための必須ツール」です。
PDFの内容(抜粋)
| 確認項目 | 主なチェック内容 |
|---|---|
| ジャッキベース・地盤 | 敷板・水平確認・沈下なし |
| 手すり・中さん・巾木 | 高さ85cm以上/巾木10cm以上 |
| 壁つなぎ | 9m×6m以内(実務5.0×5.5m標準) |
| 安全帯・ハーネス | 常時フルハーネス使用 |
| 記録・保存 | 写真+署名を残し3年間保存 |

ダウンロードはこちら
(※PDFはA4サイズで印刷し、現場でそのまま使えます)
制作者より
足場の安全は「資格」よりも「習慣」で守られます。
このチェックリストが、あなたの現場の安全と信頼を支える一枚になれば嬉しく思います。
ぜひダウンロードして、明日からの点検に役立ててください。
内部リンク
- クサビ足場とは|仕組み・高さ制限・積載荷重【2025年最新版】
- 【2025年最新版】クサビ足場の壁つなぎは計算書が義務!命を守る構造設計と最新法令まとめ
- 【2025年最新版】作業床と手すり高さの安全基準|労働安全衛生規則 第564条・第565条の完全解説(Q&A形式)
FAQ
まとめ 安全で再現性のあるクサビ式足場をつくるために
2,安衛則563/570条と仮設工業会の技術基準を両輪で適用で法令と実務の両面で安全を確保できる。。
3,風の強い地域や仮囲いの形状によっては、壁つなぎの間隔を再設計する必要がある。
4,日々の点検・記録の保存は、監査や労基署対応に欠かせない重要な証拠になる。
5,チェックリストを使えば、現場ごとに作業手順や教育内容を統一でき、品質と安全を同時に維持できる。
クサビ式足場は「速さ」と「安全性」を両立できる素晴らしいシステムですが、それを真に活かすのは“安全を最優先に考える職人の姿勢”です。
法令・技術基準を正しく守り、チェックリストや教育資料を日々の現場に活かすことで、事故のない持続可能な現場づくりが実現します。
この記事が、皆さんの現場の安全と信頼を守る一助になれば幸いです。
「※最終更新日:2025年11月10日」
________________________________________
👤この記事の執筆者/監修
ISHIDA DESIGN OFFICE
代表 I.D.O(仮設設計技術者/足場組立作業主任者)
• 建設業歴30年以上、仮設設計・点検・講義実績多数・仮設設計技術者
• 厚労省・仮設工業会の最新基準に基づき執筆
仮設設計・CAD作図・構造チェックのご依頼はこちら:
ISHIDA DESIGN OFFICE 公式サイト




