はじめに
クサビ足場は、住宅・低層建築物・改修現場などで広く用いられている足場の一種です。その構造のシンプルさと作業効率の高さから、多くの現場で採用されています。しかし、正しい手順と安全対策を怠ると重大な事故につながる恐れもあります。この記事では、最新の法令・技術指針に基づいたクサビ足場の組み立て方と安全に関する重要なポイントを、わかりやすく解説します。

目次
クサビ足場とは?
クサビ足場(クサビ式足場)とは、支柱と手すりなどを金属製のくさびで緊結する構造の足場です。部材の接続はハンマー一本で行えるため、組立・解体が迅速で、狭い現場でも扱いやすい点が特徴です。
クサビ足場の主なメリット
- 組立・解体が早い
- 高い安全性(手すり先行工法に対応)
- コンパクトに保管・運搬可能
- 特別な工具が不要
組み立て前の準備と点検
- 資材・工具の確認
- 支柱、手すり、踏板、ジャッキベースなどの必要部材を確認
- ハンマー、安全帯、ヘルメット、軍手などの保護具を準備
- 設置場所の確認
- 地盤の安定性確認(軟弱地盤はベース下に敷板を使用)
- 障害物・傾斜・段差などの有無を確認
- 安全計画と周知
- 作業手順書・KY(危険予知)活動の実施
- 作業員全員への周知と声かけ

クサビ足場の基本的な組み立て手順
以下は、仮設工業会の技術指針および各参考サイトに基づいた標準的な手順です。
ステップ1:ベースの設置
- 地面に敷板を敷き、ジャッキベースを設置
- 水平になるよう調整
ジャッキベースは水平に設置
ステップ2:支柱の設置
- 支柱をベースに差し込み、垂直を確認
ジャッキベースの高さは5㎝位内に設置、支柱には10㎝以上入れる - クサビ金具で固定

ステップ3:手すり・筋交いの取り付け
- 支柱間に水平手すりを設置
- 水平を確認しながら、上下2段設置する
- 筋交いを対角に取り付け、構造を補強

ステップ4:踏板(布板)の設置
- 手すりと支柱の上に踏板を乗せる
- 落下防止のロックを確実にかける

ステップ5:上層への展開
- 同様の手順を繰り返して上層に展開
- 作業床は2層以上にわたって設置しない(原則)
法令と技術指針に基づく注意点
法的根拠
- 労働安全衛生法 第563条:足場組立時の安全措置義務
- 足場の組立等特別教育が必要(対象者)
仮設工業会の指針より
- 手すり先行工法の推奨
- 先行手すりがない場合は「仮設手すり枠」等を使用
- 組立中の転落防止措置(安全帯・フルハーネス着用)
よくあるミスとその対策
よくある失敗例
- 支柱の設置が不十分でグラつく
- 踏板のロック忘れで転落リスク
- 手すりの取り付け忘れ
- ジャッキベースの傾斜不良
対策ポイント
- 作業前にチェックリストを使って確認
- 責任者による中間点検・完了点検の徹底
- 新人作業員には手順書と口頭説明の併用

組立作業中の安全対策
墜落・転落防止
- 常時フルハーネス型安全帯を使用
- 垂直移動には足場用梯子または階段付き部材を使用
飛来・落下防止
- 工具落下を防ぐランヤードの活用
- 資材置き場の区画と養生
熱中症・体調不良対策
- 30分に1回の休憩と水分補給
- 気温35℃以上では作業制限または中止検討

解体作業の注意点
- 組立と逆順で丁寧に実施(上から順に)
- 落下物が出ないようにロープで吊るして下ろす
- 部材ごとの仕分け・点検・清掃を忘れずに

まとめ|正しい手順と安全対策で事故ゼロの現場へ
クサビ足場は、正しく使えば非常に効率的で安全性の高い足場システムです。仮設工業会の技術指針や法令に沿った施工を徹底することで、事故リスクを最小限に抑えられます。
現場監督や職長の方は、手順書や教育資料としてこの記事を活用し、安全な現場づくりに役立ててください。
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👤この記事を書いた人
ISHIDA DESIGN OFFICE 代表 I.D.O 足場組立等作業主任者/仮設設計技術者
仮設計算歴30年以上。建設現場での足場設計・点検・安全管理業務に従事。
現在は仮設設計と安全な工事にアドバイスをしている