クサビ足場の前提と用語

要点サマリ: クサビ足場は“くさび緊結式”の足場。住宅〜中低層改修で多用され、組立が速いのが特徴です。安全は「先行手すり」などの法令要求に沿って運用します。
「クサビ足場(くさび緊結式)」は、支柱のコマ(突起)に水平材・布板を差し込み、金属製のくさびで固定する方式。別名「ビケ足場」は製品名で、一般名称ではありません。
資格まわり:足場の組立て等に従事する人は特別教育が必要(地上等の補助を除く)。2m以上の作業は墜落防止措置を講じます。(厚生労働省 労働安全衛生規則の一部を改正する省令の概要)
主な部材:支柱(コマ付き)、手すり、布板(滑り止め付が一般的)、先行手すり、ジャッキベース、筋交い、ブラケット。
YMYL注記:本記事は一般解説です。最終判断は施工計画書と元請協議、メーカー仕様に従ってください。

積算の基本式と歩掛
要点サマリ: クサビ足場は「速さ」がコストに直結します。歩掛と搬入回数、回送距離を分けて見積ると誤差が減ります。
基本式(概念):見積金額=〔材工共(人件費+機材償却+搬入回送+管理安全経費)〕±現場条件(狭小、養生、夜間)
歩掛(参考レンジ):二側・外部標準で**組立0.35〜0.55人工/10㎡、解体0.25〜0.45人工/10㎡**程度を起点(現場差・教育差あり)。
時短要素:先行手すりの標準採用、布板の軽量化、ユニット搬送の前提共有など。
※歩掛・単価は自社実績で上書き推奨。社内“出来高×写真+日報”でトラッキングし、翌現場へフィードバック。
見積・単価レンジと原価構成
要点サマリ: 単価は㎡あたりの“総合条件”で決まります。人件費と回送費を分け、追加安全(先行手すり等)は明確に積算します。
単価レンジの目安:外部二側で800〜1,200円/㎡(参考値)。狭小・夜間・長期仮設・防音対応で上振れ。
原価構成:人件費、機材償却、保管費、回送(距離×便数)、現場管理、
安全経費(先行手すり・防網・注意喚起など)。チェック:写真提出物と是正履歴を“見積根拠”に紐づけて保存→紛争予防。
施工手順(HowTo)と安全
要点サマリ: “先行手すり”と“点検者の指名・記録”がキモ。作業は幅広い墜落防止措置のもとで進めます。
標準手順(抜粋)
- 現場確認(敷地・風・地下埋設・地耐力)→ジャッキベース敷設
- 支柱建込み→筋交い→水平材→先行手すり→布板敷設(幅40cm以上)
- 階層ごとに点検者が確認→記録保存(氏名記録の保存義務)
- メッシュ・防網・開口養生/必要に応じ墜落制止用器具使用
禁止・注意:混用・互換、過積載、連続スパンへの載荷、無記録解体はNG。
是正フロー:指摘→是正→再点検→記録(写真+日報)。
※一側足場の使用範囲は原則、本足場使用に改正。幅1m以上の箇所は本足場(例外あり)。(労働局所在地一覧)

点検・記録・教育(日常/週次/引渡前)
要点サマリ: 点検者の指名と氏名記録の保存が義務化。風雨後や変更時の再点検・即是正が基本です。
- 日常:出入門点検(緊結、浮き、緩み、手すり・中さん欠落)
- 週次:水平・建地鉛直、緊結状態、養生、掲示類
- 引渡前:写真台帳・最大積載荷重掲示・是正票クローズ
- 教育:組立等従事者特別教育、先行手すりの徹底、点検者指名と記録保存。(厚生労働省)
部材一覧・互換・仕様(寸法・質量・許容荷重/混用禁止)
要点サマリ: くさび緊結式はメーカー混用NG。認定基準に基づく許容荷重を守り、最大積載荷重は見やすい場所へ掲示。
- 代表寸法:支柱(コマピッチ)、布板240/400mm 等
- 互換:メーカー間混用不可(適合証明ベース)。
- 許容荷重:仮設工業会の認定基準に基づく(安全率2〜2.5相当)。
くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準(改訂版)

高さ制限と根拠(31m/45m)
要点サマリ: 原則は31m未満。ビル工事用は条件付きで45mまで可。31m超は“2本組”規定の例外条件に注意。
- 住宅・汎用の原則:31m未満
- ビル工事用(補強・構造設計条件を満たせば)45mまで可
- 31m超の2本組:設計荷重が建地最大使用荷重を超えなければ不要(2015改正)。
※条文・通達の設計条件を満たすこと、メーカー技術基準の順守が前提。
(一般社団法人 仮設工業会「くさび緊結式足場の組立て及び使用に関する技術基準)

積載荷重の考え方(掲示義務/NG例)
要点サマリ: 布幅で許容が変わります。同一スパン2層まで・連続スパン載荷NGなどは長期トラブル防止の基本。
- 目安:400mm幅=200kg、240mm幅=150kg
- 低層住宅(軒高10m未満):1スパン200kg以下、1構面400kg以下
- 前後踏み900mm以上:1スパン400kg以下
- 6m超の一側上部/開口梁上部:200kg以下
- 掲示:最大積載荷重は見やすい場所に表示。
(※メーカー仕様・現場計算で最終判断)

他の足場との比較
要点サマリ: クサビ=速い・標準化しやすい。単管=自由度。枠組=高層安定。現場条件で選び分けます。
| 種類 | 主な用途 | メリット | デメリット |
| クサビ足場 | 住宅・改修・低〜中層 | 組立速い/安全装備しやすい | 騒音・混用不可・複雑形状に弱い |
| 単管足場 | 変形・狭小・小規模 | 自由度・安価 | 経験依存・時間がかかる |
| 枠組足場 | 高層・大規模 | 強度・安定・基準適合しやすい | 重量・搬入スペース大 |
ケーススタディ(トラブル→是正→再発防止)
要点サマリ: 「過積載×無掲示」「点検記録欠落」で揉めやすい。写真と掲示・記録で守ります。
- 事例:改修現場で布板400mmに200kg超の材料長置き→たわみ→是正。
- 対策:最大積載荷重の掲示/材料置場の分散指示/巡回時の写真+是正記録。
内部リンク
- 【2025年版】足場点検の完全ガイド|現場監督・職長のための実務&法的チェックリスト
- 仮設工業会の技術指針 “法律ではない”けど守らないと訴訟リスク?現場監督、図面作成者も必読!
- 足場の労働安全衛生法571条の完全解説|現場監督・足場業者必見
FAQ
A. 必要です。仮設工業会の認定基準・メーカー仕様に基づく許容を遵守し、見やすい場所へ掲示します。(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号))
まとめ
2,高さは原則31m未満、ビル工事用は条件付き45mまで
3,一側足場の使用範囲は厳格化。幅1m以上は原則本足場(例外あり)
4,積載荷重は布幅で管理、最大積載荷重を掲示
5,点検者指名と記録保存、写真台帳で“説明できる現場”に
参考・出典(省庁・規格・業界団体・技術解説)
- 厚生労働省「足場からの墜落防止措置の改正概要/通達・資料」(厚生労働省 労働安全衛生規則)
- 厚労省・労働局資料「一側足場の使用範囲明確化(令和6年改正)」
- 仮設工業会「技術基準・Q&A(45m適用/31m超の2本組規定の取扱)」 (一般社団法人 仮設工業会)
- 技術解説(積載荷重の考え方・安全率)(一般社団法人 仮設工業会)
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👤この記事の執筆者/監修
ISHIDA DESIGN OFFICE
代表 I.D.O(仮設設計技術者/足場組立作業主任者)
• 建設業歴30年以上、仮設設計・点検・講義実績多数・仮設設計技術者
• 厚労省・仮設工業会の最新基準に基づき執筆
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